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基本に立ち返る:課題を与えること
霊的訓練に基づいた課題を工夫することで、カウンセラーは相談者が通常の「恵みの手段」を用いて神と交わり、キリストにあって成長できるよう助けます。
他のどの分野と同様に、聖書カウンセリングにおける能力は、弟子訓練の基本要素をしっかりと理解しているかどうかにかかっています。聖書カウンセリングにおいては、6つの主要な要素が用いられます。すなわち、情報収集、関係を築くこと(関わり)、必要の見極め、みことばをもって仕えること、希望を伝えること、そして課題の実践です。
この連載では、カウンセリングに必要なこれらの基本的かつ核心的なスキルを振り返るために、「基本に立ち返って」見ていきます。本記事では、効果的な課題をどのように工夫するかを考えていきます。
課題の重要性
課題とは、カウンセリングの合間に相談者が取り組む、霊的成長を目的とした訓練です。カウンセリングに来る人の多くは、聖書カウンセラーから毎週、時間と労力を要する課題が出されることに驚きます 。世俗的なカウンセリングの多くのモデルは、相談者の話を聴き、共感し、受け入れることにとどまっています。
このような傾向により、人々が聖書カウンセリングを受けに来る際、そのような期待を抱くことがあります。しかし、課題は弟子訓練としてのカウンセリングにおいて非常に重要な要素です。こうした課題は、いくつかの点で聖書カウンセリングの目的の達成を助けます。
- カウンセリングの課題は、聖化と変化を助けます。 これは、カウンセリングにおいて課題を用いる主な目的です。よく工夫された課題には、聖書を読むこと、黙想、暗唱、そして適用といった、キリストに似た姿へと変えられるために欠かせない実践が含まれています。変化が起こるためには、これらを継続して実践することが必要です。 例えば、主イエスは、信徒が誘惑に打ち勝つためには、神のみことばを日々の糧とすべきであると教えられました(マタイ 4:4)。誠実に課題に取り組むことは、聖書的な変化を促し、相談者が変化のために聖書の教えに従って歩んでいるかを確認するとともに、愛をもって見守り、責任をもって関わる関係を築くことにつながります。
- カウンセリングの課題は、セッションで扱った内容を定着させ、学びと実践を促します。相談者は、その内容に継続して取り組むことで、聖書カウンセリングから最も大きな助けを得ます。相談者が週に1回、1時間のカウンセリングだけに頼って変化を求めている場合、その変化は遅くなります。
- カウンセリングの課題は、相談者が自らの成長と変化に責任を持つよう助けます。 相談者が自らの霊的成熟を促す訓練に毎日取り組むことは、助けをカウンセラーやカウンセリングに過度に頼ることを防ぎます。 最終的な目標は、相談者がカウンセラーではなく、変化のための助けをキリストに求めるようになることです(ヘブル 4:14–16)。よく考えられた課題は、相談者がキリストに助けと希望を求め続けるよう促します。
- カウンセリングの課題は、相談者の取り組みの姿勢や進み具合を見極めるのに役立ちます。多くの場合、霊的成長を促す課題に取り組まないことは、相談者がカウンセリングに十分に向き合っていないことを示しています。カウンセリングに対する中途半端な姿勢では、通常、変化はあまり進みません。同様に、課題は相談者の霊的成長を判断するうえで、最も客観的な目安となることが多いものです。よく考えられた課題をカウンセラーが評価することで、相談者の進み具合を見極める助けとなります。
効果的な課題を考案し、実行するための3つのポイント
効果的な課題を考案することは、カウンセリングにおいて身につけるのが難しい場合がよくあります。ここでは、聖書カウンセラーが課題を考案する力を高めるための、3つの簡単な方法を以下に挙げます。
1. 面談の前に、相談者のための霊的成長の課題を計画すること
賢明なカウンセラーは、優れた課題はカウンセリングの最中ではなく、事前に準備されるものであることを理解しています。カウンセラーは、セッション計画の一環として、事前に考えておいた課題を準備しておくことが大切です。時には、カウンセリングでの話し合いの中で得られた情報に基づいて、課題を調整する必要があるでしょう。場合によっては、セッションの方向性が大きく変わり、相談者に渡す前に霊的成長の課題を組み直す必要が生じます。
しかし、最も効果的な課題は、時間をかけてよく考え、祈りつつ準備されたものであることが分かってきます。したがって、カウンセラーはセッション以外の時間(前または後)を割いて、適切でよく練られた課題を、思慮深く、祈りつつ設計することが大切です。
2. 霊的な訓練を中心に課題を考案すること
霊的な訓練とは、霊的な成長と健全さを促すために、聖書が信徒に求めている実践です。聖書は、次のようなことに取り組むよう教えています。
- 聖書を読むことと黙想:霊的に健全な人とは、主の教えを喜びとし、「昼も夜も そのおしえを口ずさむ」人であると聖書は明らかにしています(詩篇 1:2)。主イエスは、霊的な成長は聖書の真理によってもたらされることを教えられました(ヨハネ 17:17)。したがって、課題は、意識的に、目的をもって聖書に向き合う時間を促すものであるべきです。
- 聖書の暗唱:霊的な成熟は、単に聖書を読むことだけでなく、みことばを蓄えることにもかかっています。「私はあなたのみことばを心に蓄えます。あなたの前に罪ある者とならないために」(詩篇 119:11)。みことばを暗唱することによって、相談者は聖書を常に心に留めておくことができ、それによって罪を避け、敬虔な歩みを選ぶ助けとなります。
- 聖書の適用(実際に行う課題):霊的な成長は、聖書的な学びを受けただけで得られるものではありません。相談者が自分の状況に関連する聖書の真理を学ぶとき、その内容に基づき、これまでとは異なる行動をとる必要があります。聖書的な学びは適用へとつながり、それによって人は変えられていきます。ヤコブは読者に対し、みことばを聞くだけの者ではなく、みことばを行う者になるよう勧めています(ヤコブ 1:22)。
- 地域教会への関わり(礼拝、聖書の学び、奉仕):神は、霊的な成長と成熟が起こる場として、教会という信徒の集いを定められました(エペソ 4:11–16)。課題は、相談者が地域教会に積極的に関わり、他の人からの助けや励ましを受け、また奉仕を通して他の人に仕えるよう促すものであるべきです。
- 目的をもった祈りの時間:聖書は信徒に対し、「絶えず祈りなさい」と勧めています(1テサロニケ 5:17)。主イエスは従う者たちに、「わたしを離れては、あなたがたは何もすることができない」と言われました(ヨハネ 15:5)。この箇所で主イエスは、ご自身にとどまり続けることを強調しておられます。つまり信徒は、成長し、変えられていくために、日々の恵みを求めて主に拠り頼み続けなければなりません。祈りの時間は、相談者が神との交わりを保ちつつ、神に拠り頼み続けることを助けます。
- 補助的な課題:これらの基本的な訓練に加えて、それらをさらに深めるための課題が出されることもあります。例えば、カウンセラーは、相談者が直面している葛藤の中で、聖書とその適用をより深く理解する助けとなる小冊子を課題として用いることがあります。また、相談者の状況や反応をより理解するために、日記を書くことを勧める場合もあります。
霊的訓練を中心に課題を工夫することによって、カウンセラーは、相談者が通常の「恵みの手段」を用いて神と交わり、キリストにあって成長できるよう助けることができます。さらに、基本的な霊的訓練は、課題を考案するための分かりやすい指針や枠組みを提供します 。
3. カウンセリングの目標に沿って、具体的で客観的かつ確認できる課題を考案すること
聖書は、神のみことばに基づく勧めが効果的であるためには、具体的で客観的かつ確認できるものである必要があることを示しています。例えば、パウロはコリントの人々に対し、教会戒規に関する問題について非常に具体的な指示を与えました(1コリント 5:1以降)。ヤコブも読者に対し、「争いや戦いの原因」について、またそれらへの対処の仕方についても明確に記しています(ヤコブ 4:1以降)。
聖書の例に倣い、聖書カウンセラーは、効果的な課題とは曖昧で一般的なものではなく、具体的で客観的なものであることを理解しています。漠然とした課題は、通常、効果的な変化を促しません。また、抽象的な内容に終始しているなら、相談者の変化を確認することもできません。先に述べた2の枠組みをもとに、結婚における聖書的な役割をうまく果たせていない夫婦のための、具体的で客観的かつ確認できる課題の例を以下に挙げます。
- エペソ人への手紙を3回読んでください。そして、次の質問に答えてください。1章から3章までの中で、キリストのみわざについて学んだことを5つ挙げてください。4章から6章までの中で、人間関係においてキリストに従うことについて学んだことを5つ挙げてください。
- 夫への課題:特にエペソ 5:22–33を読んで、キリストが教会を愛されたように妻を愛するとはどういうことだと思いますか。考えを書き留めてください。
- 妻への課題:主に対するように夫に従うとは、どういうことだと思いますか。考えを書き留めてください。
- エペソ 4:1を暗唱し、次回唱えられるようにしてきてください。
- 夫への課題:キリストが教会を愛されたように、妻を愛するための3つの具体的な方法を書き出してください(すでに実践していることに加えて)。今週、その3つすべてを妻に対して実践し、その内容を記録してください。
- 妻への課題:教会がキリストを敬うように、夫を敬うための3つの具体的な方法を書き出してください(すでに実践していることに加えて)。今週、その3つすべてを夫に対して実践し、その内容を記録してください。
- 今週の日曜日は、少なくとも一度教会の礼拝に出席してください。説教のメモを取り、学んだことを分かち合えるようにしてきてください。また、スモールグループに参加してください。夫婦で一緒に教会でどのような形で奉仕できるかについて話し合い、次回のセッションで考えたことを話せるようにしてきてください。
- 毎日少なくとも15分間、神との関係や配偶者との関係について祈る時間を持ってください。その際、必ず神を賛美し、罪を告白し、助けを求めることを含めてください。祈った日付と時間を記録してください。
- When Sinners Say “I Do.“の第1章を読んでください。重要だと思う箇所に10か所下線を引き、次回、学んだことを話せるようにしてきてください。
これらの課題が、それぞれ具体的(何を、どのように行うかについての詳細な指示があり、課題がカウンセリングの目標に明確に向けられている)、客観的(明確で具体的な取り組みが示されている)、かつ確認できる(カウンセラーと相談者の双方が、課題が完了したかどうかを判断できる)ものであることに気づいてください。具体的で客観的かつ確認できる課題は、霊的な成長を促すうえでより効果的です。 よく練られた課題は、効果的なカウンセリングの働きにおいて重要な要素です。他のどのようなスキルと同様に、課題の考案と実行には時間をかけて身につけていく必要があります。あなた自身のカウンセリング能力が成長するにつれ、課題を事前に計画し、神が定められた霊的な訓練を土台として課題を整え、与える課題が具体的で客観的であることを目指すよう努めてください。よく練られた課題を用いることで、あなたのカウンセリングの働きが大きく高められていくことを、やがて実感するようになるはずです。
【翻訳に関する留意事項】 本記事の日本語訳は、公認聖書カウンセラー協会 (ACBC)の許可を得て作成されました。ACBCは本翻訳の作成を承認しておりますが、翻訳の正確性、完全性、あるいは表現の適切性については、一切の責任を負いません。 内容に相違がある場合は、英語の原文が公式な正本として優先されます。原文はこちらからご覧いただけます。
Translation Disclaimer: This translation is produced with permission from the Association of Certified Biblical Counselors (ACBC). While ACBC has granted permission for this translation, they are not responsible for the accuracy or quality of the translation. The original English text remains the official version and can be found here: Back to Basics: Giving Homework
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